年明けはゆっくり休んで、石垣島にいた。芸人の村本さんや旧友たちとニンニクの効いたヤギ汁を食べながら親交を深めた。昨年の高市首相就任以来、悪政を追いきれない焦りや、映画制作の最終段階での資金難が続き鬱々としていたが、どうにか新年を迎え、自分の顔を叩くようにして奮い立たせている。ドキュメンタリー映画を撮るにあたって、ふざけていると誤解されたくなくて、公の名前を「大袈裟太郎」から「猪股東吾」という本名に統一したのだけれど、なぜかプライベートでは大袈裟さんとか、太郎さんとか呼ばれる、あべこべな状態が続いている。「猪股さん」と呼ばれるのは、まだどこかむず痒いから不思議だ。2026年、沖縄に来て10年目。東京の人力車夫でラッパーだった中卒の男が、政治の世界に足を突っ込んで10年目になる。自分の役割とは、役目とは何だろうかと石垣島の海を見ながらじっくり考えようと思ったが、世界はいつの間にか、それを許さないぐらいの混沌に包まれていた。年明け早々、トランプのベネズエラ攻撃により、民間人を含む100名以上が死亡した。フェンタニルという薬物を昨年末トランプ政権が「大量破壊兵器」に認定したことを根拠にこの攻撃は始まったが、フェンタニルは口実に過ぎず、目的は石油利権にあるという見方に私も同調する。軍事行動と報じられる。これを「戦争」と書くとネット上では、「戦争ではない。トランプがベネズエラを解放したのだ」「フェンタニルの脅威から自衛したのだ」「トランプは英雄」との声が並ぶ。しかし、トランプ自身がベネズエラ政府への介入を公言している点を含め、国際法違反の疑いは極めて強い。ロシアやイスラエルの侵略と何が違うのだろうか。これを「戦争」と呼ぶか「軍事行動」と呼ぶか、はたまた「侵略」と呼ぶか。いずれにせよ、国連や有識者の指摘を無視し、匿名のネット民やインフルエンサーの一方的な解釈だけが横行する現状は、非常に危険だろう。バズった者勝ち、稼いだ者勝ちの価値観の先にある世界は、まるでゾンビ映画の世界だ。原理原則を見失った人間たちは、ゾンビと変わらないぐらい自分も社会も壊してしまう。まして歴史上、戦争や侵略はたいてい「自衛」と言って始まる。それを忘れてはいけない。よりによってトランプ大統領は、グリーンランドの米国領土化やイランへの介入を示唆し、さらにはコロンビア、メキシコ、キューバにまで圧力を及ぼす姿勢を見せる。覇権主義の露骨なまでの暴力が国際社会を蝕みつつある。トランプがグリーンランドを欲しがる理由については、地球温暖化によって氷が溶け、これまで困難だった北極圏の資源開発が現実味を帯びてきたこと、加えて新たな海上航路としての利用が見込まれていることが指摘される。そこにある発想は、地球温暖化という大規模な自然環境破壊でさえも「ビジネスチャンス」として収奪の対象にする冷酷さだ。この感覚に、私はとてつもない恐怖を覚える。さらには、トランプ氏自身にも疑惑があるエプスタイン文書の問題(組織化された児童売春グループとの関わりについての疑惑)を、強硬な外交・軍事的言動によって風化させる意図も感じ取れる。自身の汚職事件の裁判とタイミングを合わせるように、大規模な攻撃を行うイスラエルのネタニヤフ首相と同様、内政上の危機を外部への暴力で覆い隠すという構造が、ここでも繰り返されるのか。“I’ve known Jeff for fifteen years. Terrific guy. He’s a lot of fun to be with. It is even said that he likes beautiful women as much as I do, and many of them are on the younger side.”(「ジェフとは15年間知り合いだ。素晴らしい奴で、一緒にいてとても楽しい。彼は美しい女性が好きだと言われている、私と同じくらいにね、しかも多くは若い女性だ」)—— 2002年 トランプ氏本人の発言トランプ氏は9日「国際法など必要ない。私自身の道徳心。私自身の精神。それが私を止められる唯一のものだ。」と発言した。これを独裁者と呼ばないのもなかなか無理がある話となってきた。7日には、ミネアポリスでICE(米国移民関税捜査局)の職質を拒否し車を発進した女性、レニー・グッドさんをICE職員が射殺。この場所は2020年にBLM運動の契機となった警官によるジョージ・フロイド氏殺害現場から車で6分の距離で、私も取材し土地勘がある場所だった。政府は正当防衛のためと発表したが、残された映像にはそのような場面は感じ取れない。バンス副大統領は殺害された女性を「狂った左派」と一方的に批判した。まるで「辺野古の座り込みの老人なんて轢き殺せ」とこの10年、ネトウヨが言ってきたような言葉だ。やはり、この10年で世界は大きく狂ってしまった。ICEへの抗議活動が全米に大きく広がるなか、ポートランドではDHS(国土安全保障省)傘下の捜査官が、2名を銃撃。再び大きな抗議運動の火種となった。DHS(国土安全保障省)およびICE(移民・関税執行局)は、トランプ大統領の強権的な政治姿勢のもとで、私兵的とも言える権限行使を行ってきた組織である。とりわけ第一次トランプ政権期以降、その運用をめぐって数多くの問題が指摘されてきた。正当な手続きを軽視し、大統領の“お墨付き”のもとで強引な捜査や拘束を行う。そうした姿勢から、両組織は国内外で悪名高い存在となった。移民収容施設における強制不妊手術の疑惑が報じられたことは、その象徴的な例である。私が取材を行った2020年の時点ですでに、DHSやICEに対する抗議活動は各地で起きていた。さらに深刻なのは、2021年の米国議会襲撃事件に関与したトランプ支持者たちが、これらの組織に就職しているという疑惑である。米国議会を襲撃し、死者を出した極右団体―とりわけプラウド・ボーイズのような暴力的グループの構成員が、トランプ大統領の就任や恩赦を経て、DHSやICEなどの政府機関に就職したとする報道もある。1960年代、KKKをはじめとする白人至上主義者たちが、米国南部の警察組織に多数登用されていた事実は、FBI自身が公式に指摘している。つまりは、アメリカが半世紀以上前へと引き戻されているような感覚。まさに昨年公開された映画「ワン・バトル・アフター・アナザー」の世界なのだ。そんな問題だらけのトランプ政権に対し、まるで子犬のように従い、ぴょんぴょん飛び跳ねて、はしゃぐように追随するのが、我が国の高市首相である。トランプをノーベル平和賞に推薦するなど、強権的な米政権に無批判に寄り添う姿勢が際立つ。国内に目を向ければ、ネット上、SNSやショート動画での世論工作や、電通をはじめとする広告・メディア産業を通じた情報のコントロールによって、高い支持率を維持している。しかしその実態は、雰囲気先行で、国民生活に資する有意義な政策はほとんど見当たらない。国民の生活基盤を崩すような政策や軽率な発言が繰り返されている。物価高は一向に収まらず、米の価格は再び上昇。円安はさらに進み、わずか短期間で10円規模の下落を記録した。加えて、日中関係は感情的な対立を煽るばかりで、国益を損なう結果を招いている。8日、沖縄県を訪れ玉城デニー知事と会談した小泉進次郎防衛大臣は、米軍基地由来とみられる発がん性物質PFASが浄水場から検出されている問題について、除去費用を国は補助しない方針であると伝えた。あまりに残酷な話だ。ただ暮らしているだけで、米軍基地から流出した汚染水を飲まざるを得ない人々を、国は救わないという。一体、何のための税金なのか。これは行政判断以前に、基本的人権の問題。この件についてネット上では、「デニーだから国が金を出さないのではないか」というコメントがあった。だが、もし玉城デニー知事を選んだ沖縄県民だけが、発がん性物質を含む水を飲まされ続けるのだとしたら、それは国家、すなわち自民党政権による重大な人権侵害であり、居住地と政治的選択による差別にほかならない。そんなことも理解せず、軽々しく政治を語る人々がネット上にはあふれていて、あきれ果てる。基本的な人権感覚も、国家の責任も理解しないまま、分断を煽る言葉だけが流通している。私が発信を始めてから10年。それはこの国や世界が狂っていく10年だったのかもしれない。人間の人権や原理原則よりもバズったもの、拡散されたものが正義となり、時に事実よりもデマが「真実」とされて人々を動かしていく狂った社会ができあがりつつある。そして高市政権は解散を決めたようだ。働いて働いて働いて云々と息巻いてからたった3ヶ月。自民、維新の連立政権の信を問うとされているが、この解散に大義は見えない。それどころか、自身や自民党と統一教会の新たな疑惑や維新の抱える国保逃れなどの問題から逃げきるため、それらをリセットするための解散というのが本質ではないか?支持率という空虚な桃源郷の中で彼女は酔いしれているように見える。しかし、前回の選挙で候補者の7割が消費税減税を発言したこと、解散総選挙に600億円もの税金が使われることを私たちは忘れてはいけない。さらには、この選挙で自民党を勝たせてしまえば、裏金議員の復活や増税、そして議員定数の削減の恐れがあることを、しっかりと周知しておきたい。私は今、何をすべきだろう。目の前の狂気の世界に打ちひしがれるばかりだが、それでも、目の前の狂気と向き合うしかない。そして、まだ狂っていない、正気の人たちとささやかに連帯していきたい。もしかしたら、狂気やフェイクに飲み込まれそうなボーダーにいる誰かを踏みとどまらせることができるかもしれない。そんなささやかな期待だけを胸に、これからも取材し、文章を書いていこうと思う。誰もジャーナリストになりたがらない時代にジャーナリストを名乗っている時代遅れの私だが、どうにか10年やってきた責任もある。政治の話をカジュアルに語れるように苦心してきた10年だったが、ネット社会の狂気に追い越されてしまったような虚しさがある。それでも、映画や音楽を語るように人々が軽やかに、そして事実に則した形で政治を語れる日を夢見て、このRUDE NEWSを立ち上げた。10年前、初めて沖縄北部、ヘリパッド反対運動の続く高江にきた時、極度の理不尽と緊張状態の中で住民たちが掲げていたのは、「いつでも愛とユーモアを」という言葉だった。この言葉に感動して、私は沖縄に居残ることになった。あれから10年、今は対立と分断で話が噛み合わない狂気の時代だ。だからこそこの「いつでも愛とユーモアを」という言葉を再確認する必要がある。狂った世界に飲み込まれそうな誰かに、そっと羅針盤を手渡すような。一輪の花を渡すような、一杯のお茶を差し出すような。そういう存在として発信を続けようと思う。これからもよろしくお願いします。明日からは、本日告示した名護市長選挙、そして迫る衆院選について掘り下げていく。2018年の名護市長選挙に統一教会が大きく関わった点や、新たに立ち上がった中道改革連合、そして沖縄県内選挙区の分裂について、独自の目線で取材し発信していく。寄付のお願いRUDE NEWS立ち上げを機に、寄付もカード決済ができるようになったので、広くお願いしたい。ドキュメンタリー映画製作という魔物に手を出したおかげで、RUDE NEWSは極度の経営難からのスタートになった。どうにか経営を立て直し、また全国の選挙取材、さらには海外取材を敢行したい。余裕のある方はどうにか支えてほしい。よろしくお願いします。寄付先 カード決済 https://donate.stripe.com/14AbIU9Ez1tX5f21kDbsc00振り込み https://togoinomata.com/#kikin問い合わせ (記事に関する質問もOKです) rudenews2026@gmail.comRUDE NEWS代表 猪股東吾