いろんな意味で異常な選挙が終わって、2週間が経った。結果は自民316議席。維新36議席と合わせれば、与党は352議席、野党は106議席。自民党の赤い議席で日本列島が埋まる、歴史上例を見ない規模の大勝だった。この「高市フィーバー」とも呼ばれる結果を前に、混乱や絶望、不安や虚無を抱えている人は少なくない。いわゆる「高市鬱」「サナ鬱」と呼ばれる状態だ。当初、私はそうした友人たちを励ます側にいた。しかし時間が経つにつれ、あまりにもなスピード感で憲法改定や防衛費増強、スパイ防止法など、国民の権利を縛る方向の政策が発表され、私自身も深く打ちのめされ、この1週間ほど「サナ鬱」と呼べる状態になってしまった。これは偶然の連続というより、むしろ意図的な統治戦術ではないか。物議を醸す政策を矢継ぎ早に提示し、社会が受け止めて熟議する余裕を奪う。次々に新しい論点を投下し、反対や懸念の声を追いつかせない。トランプ政権が用いたとされる「フラッド・ザ・ゾーン(情報洪水)」戦略と、構造的に似ているのではないかと感じている。フラッド・ザ・ゾーンとは、政策や論点を大量かつ高速に提示し、社会の注意と判断能力を飽和させる政治戦術である。報道や市民社会の熟議と検証の時間を奪うことで、反対や批判が追いつかないまま政策を進める効果を持つ。その結果、市民には無力感や疲労感が生まれ、いわゆる「政治的抑うつ感」を引き起こしやすい。「高市鬱」と言っていいのか問題ここで話題になっているのが、「高市鬱」と言っていいのかという問題である。まず一般論として、人名に「病名」を結びつける呼称には慎重であるべきだろう。市民社会の文脈では、「誰々鬱」「誰々菌」といった表現は、いじめや排除の言語として機能しうるからだ。同様に、地名と病名を結びつける呼称も、現代では原則として避けるべきとされている。実際、2015年にWHOは感染症の命名に関するガイドラインを公表し、地名・人名・動物名・職業名などを病名に用いないことを推奨した。この文脈で、COVID-19を「武漢肺炎」や「チャイナ・ウイルス」と呼ぶ表現が問題視されたのは周知の通りである。それらは特定地域や集団への差別やスティグマを強化する呼称とされ、現在では過激な政治的メッセージを伴うものとされる。(トランプ大統領はチャイナ・ウィルスを使用していた)では「高市鬱」はどうか。前述したように一般的には人名+病名は避けるべきとされる。しかしここで重要になるのが、権力勾配の問題である。一般市民が同級生や同僚に対して「〇〇鬱」と呼ぶ場合、それは弱い立場の個人へのラベリングになりやすい。しかし国家権力の頂点にある首相に対して用いられる場合、構造は逆転する。高市首相は巨大な政策決定権を持つ公的権力主体であり、市民が言語的に「いじめる」ことのできる立場にはない。むしろ批評・風刺・政治的評価の対象となる存在である。この権力差を踏まえれば、「高市鬱」という言葉は個人攻撃というより、政治状況に対する感情表現・批評語として理解できる。(同様に、爆笑問題の太田光が高市氏に対して「食品の消費税ゼロを実現できなかった場合の責任」を問うた発言も、弱者へのイジワルではなく、有権者側から権力者への正当な問いとして位置づけられる。本当に「イジワル」なのは誰かって話。)さらに言えば、高市政権がもたらしている現実は、市民にとって強い無力感や不安を生みうるものである。沖縄では県民投票で示された反対の民意にもかかわらず辺野古新基地建設は継続され、普天間返還の不確実性が米国の公文書で指摘された今も、工事は続いている。こうした経験が、民意が国政を動かさないという理不尽な感覚を生むのだから、「高市鬱」と呼ばれる無力感の背景は、現実に即したものだ。また、この場合の「鬱」は医学的診断名というより、冬季鬱、コロナ鬱、エヴァ鬱などに見られる日常語的な用法に近い。すなわち特定の状況に起因する抑うつ的気分を指す俗語であり、病名としての使用ではない。以上を踏まえると、絶対的な公的権力の座にある政治指導者に対し、その政策がもたらす心理状態を表す語として「高市鬱」を用いることは、人権上、なんら問題がないと結論できる。むしろ政治批評や風刺の範囲に属する正当な表現と考えられる。ちなみに私自身は「サナ鬱」というさらに俗な呼び方を使う。これは、「高市鬱などというな、人権問題だ!」と主張しながら、同時にCOVID-19を武漢肺炎と呼び、さらには「チャイナ・ウイルス」という言葉を用いたトランプ大統領を支持し続ける人々の矛盾を突く、いわば意趣返しである。#ママ戦争止めてくるわあれから二週間。選挙期間中に拡散した「#ママ戦争止めてくるわ」というハッシュタグが、ネット番組などで「気持ち悪い」などと槍玉に挙がった。しかし言うまでもなく、個人の自由や尊厳を奪う最たるものが戦争なわけで、国家が個人の自由や尊厳を奪う方向にあるなら、市民がそれを戦時に近づいていると感じるのは、極めて自然な感覚だろう。これを端的に言語化し、市民社会の持つ不安感を代弁できなかった左派政治家に、私は落胆した。しかし、左派、リベラル政党への落胆や失望は今に始まった事ではない。私が政治の現場に関わるようになってからの10年、ずっと続いてきたことだ。「正しいことを言えば伝わる」という時代は、とっくに終わり、実社会は、残念ながら人権より利権 が幅を利かせているのだ。今回、中道が大敗したからといって、今になって慌てて原因を探すようでは鈍感すぎる。左派やリベラルがまず、するべきことは解像度の低い自責ではない。むしろ、巨額の資金と技術が投入されたネット選挙の現実と、現行の公職選挙法に生じている構造的なズレにこそ、正面から向き合うべきではないか。自民党YOUTUBE選挙の構造この脱法的なネット構造を、まずリベラル政党も有権者も直視する必要がある。現在はすでに異常な情報環境にあり、熟議やファクトに基づく言論が本来の力を持ちにくい状況だ。したがって、左派・リベラルの支持が本質的に低下したと単純化するのは適切ではない。実際、今回の選挙で改憲を動機として投票した層は約5%にとどまる。いわゆる「高市フィーバー」は、このネット構造を基盤としつつ、中道勢力の不人気が重なって生じた現象と考えられる。中道の票が溶けたのは、左派だからでもリベラルだからでもない。おじさんとおじいさんのセンスだけで、有権者の声を聞かずに合流したこと。これが大きな原因ではないだろうか。有権者をあまりに置き去りにしてしまった。党のトップが決めたことに、なぜ有権者が従順に従わなければならないのか?そういう疑問や混乱があった。(もちろん安住氏の辺野古の失言もそうだ)中道は、有権者の感覚を決定的に読み違えた。イメージ戦略の高市自民に対して、イメージで完全に劣ってしまった。野党はネットに仕組まれたポピュリズムに対抗する術を持たなかった。このように、いわゆるリベラル勢力の弱体化は、政策というより構造の問題だと、私は考えている。ポピュリズムへの対抗策がポピュリズムでいいのか?良いわけがない、しかし、正直、ここは私もまだ答えがまとまらない。今後も考え続けなければならない。なので、感覚的な話になってしまうが、人気取りではなく、有権者の声を本当にすくいあげる政党が今、求められている。有権者は、もはやリベラル政党だから投票するのではない。辺野古の埋め立て工事に合理性がないから、反対する。憲法改定が有権者に不利益だから、反対する。物価対策をしっかりやりそうだから、投票する。少しでも戦争を起こさない政党に、投票する。こうしたナラティブを有権者に合理的に説明できる政党、そして有権者からの声をしっかりと受け止められる政治家、それらだけが、今のイメージだけの高市自民政権に対抗しうるのではないだろうか。基本的人権があることが、いかに有権者にとって有益かを説得力をもって語れる政治家がこれからの時代に必要なのだ。もちろんそれは政治家だけではなく、ひとりひとりの市民が説明力、プレゼン力をつけていくことが求められるだろう。「サナ鬱」の無力感に飲み込まれずにいかに、考えることを続けるか。まずは、そこからはじめるしかない。不完全なままで、それでも歩き続けるしかない。2月21日昼、辺野古を抱える沖縄北部名護市の小学校に酔った米兵が侵入して逮捕された。こうした被害が多すぎるので、沖縄県民は辺野古の建設に反対し基地負担軽減を求めている。思想ではなく、実害に基づいて反対しているのだ。辺野古が完成すれば、このような事件が増加することは容易に想像できる。こうした実態を「本土」の政治家も、しっかりと説明できるようになるべきだ。%3Cblockquote%20class%3D%22twitter-tweet%22%3E%3Cp%20lang%3D%22ja%22%20dir%3D%22ltr%22%3E%E3%80%8C%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%AB%E5%A3%B0%E3%82%92%E3%81%8B%E3%81%91%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E3%81%8C%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%8D%E3%80%80%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E4%BE%B5%E5%85%A5%E7%96%91%E3%81%84%E3%81%A721%E6%AD%B3%E3%81%AE%E7%B1%B3%E5%85%B5%E3%82%92%E9%80%AE%E6%8D%95%E3%80%80%E6%B2%96%E7%B8%84%E3%83%BB%E5%90%8D%E8%AD%B7%E7%BD%B2%E3%80%80%20%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Ft.co%2F79shxdDnii%22%3Ehttps%3A%2F%2Ft.co%2F79shxdDnii%3C%2Fa%3E%3C%2Fp%3E%26mdash%3B%20%E6%B2%96%E7%B8%84%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%82%B9%20(%40theokinawatimes)%20%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Ftwitter.com%2Ftheokinawatimes%2Fstatus%2F2025372596150415790%3Fref_src%3Dtwsrc%255Etfw%22%3EFebruary%2022%2C%202026%3C%2Fa%3E%3C%2Fblockquote%3E%20%3Cscript%20async%20src%3D%22https%3A%2F%2Fplatform.twitter.com%2Fwidgets.js%22%20charset%3D%22utf-8%22%3E%3C%2Fscript%3Eサナ鬱なので今回も感情的に書いた。次回からは、もう少し冷静に書いてみようと思う。寄付はこちらちなみにRUDENEWS立ち上げ1か月は、6万円ほど赤字でした。立ち上げの経費にかなりかかったにしては、まずまずのスタートです。どうにか黒字化させて続けていきたいので、よろしくお願いします。感想や応援はこちらまで rudenews2026@gmail.com